こんにちは。漫画ソムリエのななです。
今回は、漫画「バクマン。」の実写映画についてお話します。
漫画「バクマン。」について
原作・大場つぐみ、作画・小畑健「バクマン。」は、雑誌「週刊少年ジャンプ」2008年37・38合併号から2012年21・22合併号まで連載された少年漫画作品です。
2003年から2006年にかけて同誌に連載され大ヒットした「DEATH NOTE」も、この大場先生と小畑先生のコンビによる作品でした。「DEATH NOTE」の話数カウントは、page.〇。
本作の話数カウントは「〇ページ」。サブタイトルは「〇〇と〇〇」です。
あらすじ
真城最高(通称:サイコー)は、絵を描く事が得意な中学3年生です。
ある日、同じクラスの秀才高木秋人(通称:シュージン)に「俺と組んで漫画家になってほしい」と誘われます。
突然の提案に戸惑ったサイコーでしたが、密かに恋心を抱いているクラスメイト亜豆美保が実は声優を目指している事を知ります。
そこで、サイコーは漫画家を目指すことを決め、「自分たちの漫画がアニメ化されたら、ヒロインの声優をお願いしたい。そして、その夢が叶ったら自分と結婚して欲しい」と亜豆にプロポーズします。すると、驚いたことに亜豆はOKをしてくれたのです。
サイコーには、過労死で亡くなった漫画家の叔父がいました。サイコーの祖父は、孫が漫画家を目指すと聞き、その亡くなった叔父の部屋の仕事場をサイコーに貸してくれました。
サイコーとシュージンは、その仕事場でジャンプ漫画家を目指し作品を描き始めます。ところが、同じ時期に、10年に1人の逸材と言われる1歳年上の新妻エイジは、すでに連載の準備に入っていたのです。
「努力」「友情」「勝利」を三大原則とする『週刊少年ジャンプ』の編集長佐々木は、サイコーとシュージンにはっきりと言い渡しました「マンガは面白ければいいんだ。君たちの作品は面白くない」。
漫画家と漫画作品
注意:ここから下はネタバレを含みます
亜城木夢叶作品
サイコーとシュージンのペンネームは、サイコー(真城)と亜豆の「夢」が「叶」うようにという意味で、<亜城木夢叶>に決まりました。真ん中の「木」は、シュージン(高木)からとっています。
2人は、このペンネームでジャンプ漫画家としてデビューし、多くの作品を生み出しました。
カッコ内の数字は、何番目に作った作品かを表しています。
「ささやかな時」は、サイコーが独力で描き上げた作品の為、順番に含めないことにしました。
【連載作品】
1. 疑探偵TRAP(5)
2. 走れ!大発タント(9)
3. PCP -完全犯罪党-(12)
4. REVERSI(13)
【読切作品】
1. この世は金と知恵(3)
2. Future Watch-未来時計-(6)
3. TEN(8)
4. ささやかな時
【未掲載作品】
1. ふたつの地球(1)
2. 1億分の(2)
3. エンジェルデイズ(4)
4. 俺2人(7)
5. この世はKTM(10)
6. STOPPER OF MAGMA(11)
川口たろう(本名:真城信弘)作品
川口たろうは、ジャンプ漫画家をしていたサイコーの亡くなった叔父です。
代表作は「超ヒーロー伝説」1作品でアニメ化もされました。その後、ヒット作が生まれる事はありませんでした。
新妻エイジ作品
新妻エイジは、亜城木夢叶のライバル的立ち位置の漫画家です。
エイジは、佐々木編集長に「自分が『ジャンプ』で一番人気の作家になったら、自分の嫌いな漫画をひとつ終わらせる権限」を要求しています。
エイジは、天才ゆえに、能力や考え方に偏りがありますが、同業の漫画家たちと接していく内に、漫画家としてだけではなく人としても変化をみせていきます。
【作品】
・ CROW
・ LOVE力A to Z
・ ZOMBIE☆GUN
福田真太作品
福田真太は、漫画家になるために上京し、新妻エイジのアシスタントを務めていた時期もある漫画家です。
亜城木夢叶と新妻エイジ、そして自分自身と中井巧朗をあわせて「福田組」と名付け、自分がそのリーダーとなりました。
気性が荒いところはありますが、熱くて心優しい青年です。
【作品】
・ KIYOSHI騎士
・ ロードレーサーGIRI
・ 殺生由意
蒼樹紅作品
蒼樹紅は、大学や大学院に通う女性漫画家です。
もともと、同じ集英社の少女漫画雑誌「マーガレット」に漫画を描いていましたが、内容が週刊少年ジャンプの方が合うということになり移籍をしてきました。
後に、福田組に入ります。
【作品】
・ hideout door(作画:中井巧朗)
・ 青葉の頃
・ 神様がくれた…
平丸一也作品
平丸一也は、会社員を辞めたくて漫画家になった男性です。やる気を出すと、漫画以外にも高い能力を発揮する、そこそこの天才です。
後に、福田組になります。
【作品】
・ ラッコ11号
・ 僕には通じない
編集者と編集者
本作は、「ジャンプ漫画家を目指した少年たちの物語」としてリアリティを追求した内容になっています。
そのため、登場する多くのジャンプ編集者たちには、実在する編集者のみなさんがモデルとなっていました。
服部哲
亜城木夢叶の初代担当編集者です。名前は、実在するジャンプ編集者、服部ジャン=バティスト哲さんからとっています。顔は、同じく実在するジャンプ編集者、齊藤優さんがモデルになっています。
相田聡一
ジャンプ編集部班長の1人で後に副編集長になる、中井巧朗と蒼樹紅の初代担当です。モデルは、ジャンプ編集部の元班長及び副編集長であり、現在は、少女漫画雑誌「りぼん」編集長をつとめる相田聡一さんです。
服部雄二郎
新妻エイジと福田真太の担当編集者です。実在するジャンプ編集者、服部雄二郎さんが名前と髪型(アフロヘアー)のモデルになっています。
中野
ジャンプ編集部班長の1人で、後に雑誌「必勝ジャンプ」編集部へ異動し、副編集長と「PCP」の担当を兼ねることになります。モデルは、実在する、ジャンプ編集部現編集長の中野博之さんです。
𠮷田幸司
ジャンプ編集部班長の1人で、平丸一也の担当です。モデルは、「DEATH NOTE」を担当していた実在のジャンプ編集部班長の吉田幸司さんです。
中路
ジャンプ編集者です。モデルは、実在するジャンプ編集者の中路靖二郎さんです。
大西恒平
ジャンプ編集部班長の1人です。モデルは、実在するジャンプ編集部班長の大西恒平さんです。
佐々木尚
ジャンプ編集部編集長です。以前、川口たろうの担当編集をしていました。モデルは、実在するジャンプ編集部第9代編集長の佐々木尚さんです。
瓶子吉久
ジャンプ編集部副編集長、のちに編集長になっています。モデルは、実在するジャンプ編集部の副編集長、のちに第10代編集長になられた瓶子吉久さんです。
鳥嶋
「超ヒーロー伝説」が連載されていた当時はジャンプ編集長をしており、サイコーとシュージンがジャンプの新年会で会った時は集英社取締役になっています。
モデルは、実在するジャンプ編集部元編集者・元編集長の鳥嶋和彦さんです。集英社専務取締役等を経て、現在は株式会社白泉社顧問をされています。
サイコーたちが新年会で鳥嶋さんと話すシーンは、第37話(37ページ 取締役とトリ)に登場します。単行本の第5巻に収録されています。
茨木
雑誌「ジャンプSQ.」の編集長です。モデルは、ジャンプSQ.の初代編集長であり、ジャンプ編集部第8代編集長の茨木政彦さんです。現在、集英社クリエイティブの代表取締役をつとめていらっしゃいます。
まとめ-編集者と編集者-
編集者の皆さんは会社員のため、編集部の異動があったり、役職も変わったりしていきます。また、退職される方や独立される方などもいることと思います。
「ジャンプ編集者のモデルは、みんなジャンプ編集者」と捉えていただけるとわかりやすいと感じました。
今回、「バクマン。」を読んで、もしくは、このページを読んで、ジャンプ編集者さんたちに興味を持たれた方、もともと興味を持っているよという方々。
大石浩二作「いぬまるだしっ」の紙書籍のコミックスの、カバーの折り返しには、当時の大石先生の担当編集者さんの幼い頃の写真(と大石先生のコメント)が載っています。よかったらみてみてください。
[中古]いぬまるだしっ (1-11巻 全巻)このページで紹介した編集者さんが掲載されている巻は、以下の通りです。
(敬称略)
2巻 大西恒平
3巻 服部ジャン=バティスト哲
4巻 中野博之
8巻 中路靖二郎
10巻 瓶子吉久
実写映画化
2015年10月3日、佐藤健と神木隆之介のダブル主演で実写映画が公開され、17億円を突破する大ヒット作品となりました。
原作と映画の内容に大きな違いはありませんが、物語スタート時のサイコーたちの年齢が、原作では中学3年生であるのにたいし、映画では高校3年生に変更されており、また、サイコーたちと新妻エイジは、同じ年齢という設定に変更されています。
また、メイン女性キャラクターは亜豆美保のみとなっています。
そして、原作には、サイコーとシュージン以外の登場人物たちの野心、恋愛、悲哀などが多く描かれていますが、映画では、サイコーとシュージンが「亜城木夢叶」というジャンプ漫画家として、苦難にめげず熱く立ち向かっていく内容に的を絞っています。
メインキャスト
真城最高 | 佐藤 健 |
高木秋人 | 神木隆之介 |
亜豆美保 | 小松菜奈 |
福田真太 | 桐谷健太 |
平丸一也 | 新井浩文 |
中井巧朗 | 皆川猿時 |
川口たろう | 宮藤官九郎 |
服部哲 | 山田孝之 |
佐々木編集長 | リリー・フランキー |
新妻エイジ | 染谷将太 |
受賞
第39回日本アカデミー賞
- 優秀監督賞(大根仁)
- 優秀助演男優賞(染谷将太)
- 最優秀音楽賞(サカナクション)
- 優秀美術賞(都築雄二)
- 優秀録音賞(渡辺真司)
- 最優秀編集賞(大関泰幸)
その他多数受賞
- 第37回ヨコハマ映画祭
審査員特別賞(制作スタッフ・キャスト)/日本映画ベストテン(2015年度)第4位 - VFX-JAPAN アワード2016 劇場公開実写映画部門 最優秀賞
- 第25回日本映画批評家大賞 監督賞(大根仁)
- 第35回 藤本賞 特別賞(川村元気)
- 第8回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞
小松菜奈(「ディストラクション・ベイビーズ」「黒崎くんの言いなりになんてならない」「ヒーローマニア-生活-」とあわせて受賞) - 第25回(2015年度)日本映画プロフェッショナル大賞
- 個人賞 作品賞
- ベストテン 第1位
- このマンガがすごい!2010 オトコ編第1位
- マンガ大賞2010 第3位
Blu-ray&DVD発売、デジタル配信中
2016年4月20日、Blu-ray&DVDが発売されました。
デジタル配信は、AmazonやU-NEXTからご覧になれます。
まとめ
今回は、原作・大場つぐみ、作画・小畑健「バクマン。」の実写映画についてお話しさせていただきました。
この「バクマン。」を読んでいくと、毎週楽しさを届けてくれる「週刊少年ジャンプ」が、どのように作られているのか、そこで漫画を描くとはどういうことなのか、かつ、漫画家になれない場合はどうなるのか、という事をリアルに知る事が出来ます。
ジャンプ漫画家になりたい方にとっては、もはや参考書になるような作品ではないでしょうか。実際、この漫画の連載開始以降、低年齢層のジャンプへの持ち込みが増えたそうです。
週刊少年ジャンプと言えば、<必殺技>です。今まで、多くのジャンプ漫画に、ありとあらゆる必殺技が登場してきました。
「読みたい気持ち」と「描きたい気持ち」を掛け合わせて、何十年も求められ続けてきている雑誌「週刊少年ジャンプ」。その存在そのものが、まさに<必殺技>だと感じます。
この作品を読んで観て、「必殺技の舞台裏」を楽しんでいただければうれしいです。
ありがとうございました。